2013年5月16日木曜日

Vicky が朗読中に…


高校(1 年生)時代の交換日記から

Ted: 1951 年 9 月 13 日(木)晴れ[つづき]

 Mouse 先生のライオンの真似にも笑ったが、四限に十六番教室で見た落書きと、五限に Vicky の笑いが止まらなかったのにも、大いに笑った。社会の教室の黒板には、「YMG 先生デカスギル」と書いてあったのである。この簡単で特徴をよく捉えた言葉は決して、ASK 先生に対する「オッサン」のようには、YMG 先生を怒らせないだろうと思われた。それなのに、後ろから見ると釣り鐘型の両脇に犬の垂れ下がる耳を厚くしてくっつけたような髪型の女生徒が、箒でギスギスと黒板をなでて消してしまった。
 そんなことをした Vicky は、次の国語の時間に「一、本の読み方」(「二」から始めて、「一」へ戻ったのである)の二ページ目の朗読を当てられた。「すなわち、学問をしたり本を読んだりする者は」のところで、「学問」を「勉学」とでも読み違えそうになって、「べ」といってから気づき、いい直そうとしたが、「くもん」がすらすらとは続かなくて、もう一度この二つの漢字を最初からいおうとしたら、また「勉学」の第一音が口から出て、とうとう自分で笑い出した。噴き出しながら、こらえながら、両の目と鼻をギリシャ彫刻的な長い顔の中で、笑いの波によって中心へ押し寄せながらも、一行、二行、三行と進み、「首鼠(そ)両端右顧左眄(うこさべん)して怯懦(きょうだ)に走りやすいのです」という、難しい字が多いが振り仮名も多いところを読み通した。それでも、笑いは彼女の口を揺することをやめない。細くて伸びのある声を綿の上に落として埋もれさせるように、「よ〜め〜ま〜せ〜ん」といって、腰かけてしまった。ぼくが一昨日の H 時に司会をしていて、「うでくらべ」を「うべく…、うくらで…、うれくら…、うらべくで…」などと何度もいい損なったときには、気味の悪いほど誰も笑わなかったが、Sam が「…でっせ!」といったときはどうだった?

 アセンブリーのことも詳しく記したいが、簡潔にしておかなければならない。どこそこ出身の誰それと、どこそこ専属の誰それという二人の女性(KKM 君は「先生」という敬称をつけて紹介した)を招いてのアコーディオン独奏と独唱が行なわれた。アコーディオンの方は、がっちりとした小麦色の肌の人。独唱の方は、SCAP 図書館長の口を少し小さくして、髪を少し多くしたような人で、流れるようなところは、楽しそうに、せり上がって来るようなところは、空気の圧力が異なるところへ入った人のような表情で、静かに引いて行くところは、花が笑いながらしぼむように…。

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