2013年5月24日金曜日

ヨウコ先生の不意試験


高校(1 年生)時代の交換日記から

Ted: 1951 年 9 月 19 日(水)曇り一時雨[つづき]

 問題を見て、まずアガッた。一番も二番も分数の大きな数字の値が出る。これでは違っている可能性が高い。しかし、検算はあとからにして、次へ進む。出来る。次。根号がかかっていて、中は分数で、おまけに虚数である。応用問題に取りかかる。その二番目からする。五桁の平方根がきちんと出る。応用の一番へ戻る。式は作れたが、変な値が出る。式を再検討する。直す。出た。最初へ戻る。行列式で検算を試みる。だいたいこのようになりそう。一つ違っていた。他に誤りは見つからない。その間にサイレンが鳴っている。十分の延長だ。六限にこの教室で日本史を受ける上級生たちが廊下で騒ぎ出す。「おい、えらい真面目にやっとる。」「まだ出来んがか。」「横向くもん誰もおらん。」「そこにドウラク広げとる。」これらの言葉を耳にして、ぼくがニヤニヤしていると、「眼鏡かけたが、出来たがか、出来んがか」と来る。うるさい、黒いハエども。斜め前では、Vicky が背を張って丹念に計算を続けている。Jack がトップに提出した。六限の始まるサイレンが鳴ったので、列の最後部のぼくは、自分の列の答案を前まで集めて行った。誰もあまり出来ていないようだ。口々に「めちゃくちゃや」などといいながら、戦場を引き上げた。

 夕食の前に目覚めた祖父は、朝と勘違いして、顔を洗うために廊下へ出て行き、「どーも、はや」と、失態を歎いている。
 ぼくの毎日は、目を開けていながら、半睡半醒のようなものである。どこにも明瞭なものを見出し得ない。寝ぼけなら寝ぼけでよいが、白昼のもうろうとした行動は、何にもまして悪い。固くなることが出来なくなったようだ。骨がない。全然ない。Sam のような、実際的な人間にならなければ——。

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