2013年5月7日火曜日

「可愛らしいはずの子犬も…」/図書館の帰りに…


高校(1 年生)時代の交換日記から

Ted: 1951 年 9 月 5 日(水)曇り[つづき]

 復活が必要? そう何度でもでは、薬の効かないハイドになってしまう。薬がなくても、ぼくらしいぼくに立ち返らなければならない。ぼくらしいぼくとは一体どこにあるのだ。Sam からの宿題、「もっと実習して、明確な個性を作り上げなさい」を、まだしていない。これが出来たときに初めて、ぼくらしいぼくが誕生するのだ。——講和会議。独り立ち。国についての、こんな言葉を耳や目に入れさせられていながら、自分一人をさえも処理出来ないでいるぼくが情けない。(注 1)
 しかし、考え過ぎて、くよくよしている必要はないのじゃないか(こんな調子だから、ぼくの書く文章には「しかし」やカッコが多くなってしまう。止む間のない自己反駁と、広げすぎる思考と——)。捨てなければならないものを捨てて、うち向かわなければならないものに向かう。ただそれだけのことを、いまからすればよい。

 編集室に子犬がいた。青い染料をつけられ、水に浸されて震えていた。足は細く、もし彼が少年だったら、紫中の四組にいた KT 君同様、「ガイコツ」というあだ名を付けられるに違いないと思われる姿だ。飢えて震えている生命に向かって、いろいろな言葉が放たれた。Tacker は、「可愛らしいはずの子犬も、こう汚いとグロテスクなもんやな」と。
引用時の注
  1. 日本の国は講和条約締結後、本当の独り立ちをしては来なかったと思うこの頃である。


Sam: 1951 年 9 月 6 日(木)晴れ

 解析のテストがあった。五問目は半分しか出来なかったから、正解率は 4/5 である。ブランク時には昨日図書館で調べて来たのをまとめた。その他に、『アサヒグラフ』や『毎日グラフ』を見たり読んだりした。
 きょうも昨日の続き(もう 1/3 ほど残っていた)を調べるために、自転車で図書館に行った。その帰り、広坂通りで Neg に出会った。映画を見に行って来たそうで、その目的は二日間にわたる一斉テストの労苦を忘れるためだとのこと。
(注 1)
引用時の注
  1. Neg は私と同じ高校の生徒。私はこの日の午後どこへも行かないで、このあとに引用する通りの、細字で 2 ページ半ほどの長い日記をしたためていたようだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿