2013年5月21日火曜日

本『学生時代』に魅了される


高校(1 年生)時代の交換日記から

Sam: 1951 年 9 月 17 日(月)晴れ[つづき]

 第一限の社会が始まる前、ぼくを基準とし、廊下側の反対を正面として、左に桂馬飛びしたところにいる生徒が『キング』を読んでいるのを発見した。さっそく見せてくれといったが、前にいる生徒に貸す約束だといって、別の本を見せてくれた。新潮文庫の『学生時代』。その中には、「受験生の手記」、「母」、「艶書」、「鉄拳制裁」など、十二編が収められている。作者は(知っているだろうな)(注 1)。そればかり読んでいた。社会の時間に先生が何を話していたかも記憶していない。とにかく、いまの時間は耳を働かせているよりも、目を働かせている方がよいようだとだけ思った。目から入って来たものは他の意味で大きな社会科の問題を含んでいた。そして、幾倍かの興味を持つことが可能であった。どの科目よりも多く書いてばかりいなければならない生物の時間でさえも、時々本を出しては読んだ。ぎりぎりのところに限界をつけてまでも、『学生時代』なる本は読まずにいられないのである。

 ハンドボールはシュートの練習をした。何が何だかはっきり分らないが、とにかく、「力一杯ゴールにたたきこめ」ばよいのだが、なかなかうまくいかない。やれラインクロスだ、オーバーステップだ、球が弱い、ゴールからそれる。さんざんである。やっぱり好きじゃない。[つづく]
引用時の注
  1. 作者は久米正雄。私は当時知らなかったし、その後も読んではいない。

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