高校(1 年生)時代の交換日記から
Ted: 1951 年 9 月 2 日(日)晴れ[つづき]
ラジオの「のど自慢」が聞こえて来る。転がるように、流れるように。反射という反発的な性質を持っていながら自らの中に太陽を収めることの出来る鏡という代物がずらりと並んで模倣を行ない、そこら辺の楽しいものや明るさを二倍にしているかのような雰囲気が作り出される。日曜日には日曜日らしくしなければならない。Jack の家へ。試験の前だから来ないだろうと思っていたそうだ。二人で金沢の中心をうろついた。ぼくが喜多さんになったかと疑われるほどだ(注 1)。ほとんど通らない白線入り帽子をたまに見つけると、Jack は、「あれも菫台でない。みんなカジッとるらしいな(注 2)」とばかりいっていた。流行歌集を買って来たという Tom に、大和と宇都宮書店の間で出会う。ぼく宛に葉書を出したことと、六日に試験があるので、その前に習いに行くということだけを聞かされた。
兼六園の中の、ちょうど消防署の向かいに当たるところ、茶店兼貸し席所(正確には何という商売だろうか)の家に Garappachi(OD 君)を訪ねる。縁台で将棋が始まる。Garappachi が二勝一敗、Jack が二敗。他に誰かが一勝していないと、計算が合わないって? Garappachi の親戚で製材所へ勤めているというあんちゃん(将棋の場面にはこういう名詞が付き物だね)が一勝したのだ。ボー観(傍らでボンヤリ見ていること)していたら、ルールが少しは分ったような気がしたが、あんなに時間がかかって、じれったいゲームは好きになれない。
Jack の家へ戻って、「私は誰でしょう」を聞いてから帰る。工藤祐経(注 3)の名がぼくの頭のどこにどうして収まっていたのか不思議だ。
Ted: 1951 年 9 月 2 日(日)晴れ[つづき]
ラジオの「のど自慢」が聞こえて来る。転がるように、流れるように。反射という反発的な性質を持っていながら自らの中に太陽を収めることの出来る鏡という代物がずらりと並んで模倣を行ない、そこら辺の楽しいものや明るさを二倍にしているかのような雰囲気が作り出される。日曜日には日曜日らしくしなければならない。Jack の家へ。試験の前だから来ないだろうと思っていたそうだ。二人で金沢の中心をうろついた。ぼくが喜多さんになったかと疑われるほどだ(注 1)。ほとんど通らない白線入り帽子をたまに見つけると、Jack は、「あれも菫台でない。みんなカジッとるらしいな(注 2)」とばかりいっていた。流行歌集を買って来たという Tom に、大和と宇都宮書店の間で出会う。ぼく宛に葉書を出したことと、六日に試験があるので、その前に習いに行くということだけを聞かされた。
兼六園の中の、ちょうど消防署の向かいに当たるところ、茶店兼貸し席所(正確には何という商売だろうか)の家に Garappachi(OD 君)を訪ねる。縁台で将棋が始まる。Garappachi が二勝一敗、Jack が二敗。他に誰かが一勝していないと、計算が合わないって? Garappachi の親戚で製材所へ勤めているというあんちゃん(将棋の場面にはこういう名詞が付き物だね)が一勝したのだ。ボー観(傍らでボンヤリ見ていること)していたら、ルールが少しは分ったような気がしたが、あんなに時間がかかって、じれったいゲームは好きになれない。
Jack の家へ戻って、「私は誰でしょう」を聞いてから帰る。工藤祐経(注 3)の名がぼくの頭のどこにどうして収まっていたのか不思議だ。
引用時の注
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