2013年5月23日木曜日

白と黒の落ち着いた服装


高校(1 年生)時代の交換日記から

Ted: 1951 年 9 月 19 日(水)曇り一時雨

 Lotus と Jack が早く誘いに寄ってくれる。Lotus が聞いたところによると、Compe の解析のレッスンでは、昨日ヨウコ先生が来られなくて、補欠の先生が来られ、「遊べる!」と思ったら、不意試験があったということだ。
 体操はハンドボールと体重測定。英語は dictation。社会は民主主義的憲法の変遷(ぼくは昨日から二冊目のノートを使い始め、きょう、隣席の Vicky も一冊目を使い尽くしたが、彼女は持参した新しいノートに移らないで、かたくなに裏表紙に書いていた
(注 1))。国語乙は一(第一〇段)。これらの授業を忙しく受けて、SH が済むやいなや編集室へ行くと、Lotus の解析のレッスンでも試験があったとの情報が入っていた。Deco の弁当が壁の高いところにつり下げられていた。彼は Jack を犯人と見なして Jack の帽子を奪ったので、Jack は顔面の血管を硬直させて彼に組みついた。Deco 先輩にも、意外に早とちりするところがある。
 弁当を済ませると、すぐに九番教室へ行く。窓から雨の降っているのが見える。われわれは、その上にさらに低明度の灰色の空気を流した。誰も彼もそのことを考えている。広げられているものは、一種類のノートと三種類の本
(注 2)に大別出来る。ぼくは何も広げないで、Hotten のせがみに応じたり、Jack の第三種の本に見入ったり、白と黒の落ち着いた服装ながら落ち着きのない歩き方をする——と見えるのは、見る方の心に落ち着きがないからか——a strong rival, Vicky, (注 3)が何をしているかを観察したりした。第二のサイレンが鳴った。ヨウコ先生も補欠も現れない——。ぼくは、まだ習わない先の、不等式のところの問題を解いてみようとした(自慢ではないが、他の者たちはこれほど呑気ではあるまい)。そこへやっと、補欠としての Pentagon 先生が来られた。Mouse 先生の時間の dictation のように、がやがやと妨害をしたのではかえって損だと知ってか、一同は静かに問題用紙を受け取った。[つづく]
引用時の注
  1. 1年生のとき、Vicky と私は二つのレッスン以外はすべて同じ教室で学ぶことになったが、とくに社会科では一番前で隣同士の席だった。机は一人用のものが間に通路を作って並べられていたので、隣と言っても少し離れており、言葉を交わすこともなかった。東京でこのところ毎年開催されている高校同期生関東在住者会に数年前、Vicky こと TK さんと私が揃って出席した際に、私は近況報告として「湯川秀樹を研究する市民の会」や地域の「九条の会」に参加していることを述べた。男性の誰かが、「九条の会」と聞いて、私としてはお門違いのようなことに首を突っ込んでいるという意味で、驚きの声を上げたとき、かつてのライバル TK さんは、「湯川博士も九条を守る立場だったでしょう」と、助太刀をしてくれた。いま日記から、「民主主義的憲法の変遷」の講義を隣席同士で聞いた間柄だったことを思い出さされ、感慨深い。
  2. 教科書、「道楽」と呼ばれる参考書、そして、持っていたのは少数派ながら、大学受験用の参考書、の三通りの本のこと。
  3. 「白と黒の落ち着いた服装」という表現で、当時の Vicky の姿がまざまざと思い出される。白の長袖のブラウスと、黒の長目のスカートだった。

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