2013年2月18日月曜日

「幽玄の美」を通り越して


高校(1 年生)時代の交換日記から

Ted: 1951 年 7 月 13 日(金)小雨のち晴れ(つづき)

 図画の Pentagon 先生
(注 1)の講義はいささか退屈なのだが…。「…というわけなんです。んで、…」、「君たちの多くは…」、「…と、私は思うわけなんです」。こういう言葉がやたらに多い。きわめてゆっくりした話し方だから、Sam なら楽に速記できるだろう。「大陸的な雄渾な気宇に満ちたプラン」である唐招提寺について、写真を見せながら説明された。続いて、その建立者である唐生まれの僧・鑑真についての話と、鑑真像の写真からわれわれが何を感じ取るべきかについての話があった。
 「君たちの多くは、こんな写真よりもヤ、映画俳優や、野球選手のブロマイドを、見る方が、よほど、嬉しいんじゃ、ないかと、思うんすが、それはヤ、人間の、発達段階に、おける、ほんの初歩に過ぎんと、私は思うわけなんです。」
 「ブロマイド」と「初歩」は甘い発音でいわれた単語である。鑑真像の写真を見てわれわれが騒ぐと、先生は、「君たちは、えらい喜んで、みえますが、たんに、盲(めしい)である、ということで、なんですね、軽く見て、笑っちゃ、いかん」といわれた。われわれは「幽玄の美」を見ることを通り越して、「かんしん」(Pentagon 先生は鑑真をこう読む。正しくは「がんじん」)の頭と Pentagon 先生の頭との光り方が似ているのに感心したのである。
引用時の注
  1. 私の日記では、実際に使われていたこの先生のあだ名に似た音の英単語を当てた。

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