2013年2月10日日曜日

オールスター戦、教科書の未習問題を勘で


高校(1 年生)時代の交換日記から

Ted: 1951 年 7 月 8 日(日)雨

 Tom はかっきりに来た。約束は実行されないものと思って、百メートルほど Jack の家へ行きかけたところで出会い、わが部屋へ戻ったのは、ちょうど「のど自慢」が終わった時刻だった。Tom は、subject と predicate、形容詞と副詞がどうやら分るようになった。
 Tom に『トム・ソーヤーの冒険』(岩波文庫版)を貸す。Tom は Tom から何を学ぶだろうか。彼に尋ねたいことがあり、あるものを見せると、彼は他のところに気を留めてしまった。三時過ぎ、ぼくはどうしても Jack に会いたいと思ったので、Tom を大学病院の門前まで送った。彼の兄さんが入院しているのだった。雨の中を、下駄をぬるぬるさせて歩く間中、彼は気を留めたことについて質問するので、うるさくてたまらなかった。

 Jack は待っていてくれた。出て来るや否や、顔の半分を口にして、「パシフィック、勝ったぞ」という
(注 1)。接戦の末、最終回、飯田のホーマーで四対三。第三戦でかろうじて一勝したとのことだ。順ちゃん(注 2)はすばらしいじゃないか。この試合には、パシフィック三本のホームラン中の一本を叩いて、三試合の打率五割、首位打者賞と残念賞を獲得した。
 Jack の部屋の入り口で、脇に敷かれていた布団の上へ帽子を投げ出して、びっくりした。小父さんが、その布団の中で雨の日曜を楽しんでおられたのだ。下手をすれば、厚くて固い鍔(つば)で頭を打撃して、お楽しみをぶち壊すところだった。帰る頃には小母さんも薄暗い隣の部屋の畳の上で横になっておられた。

 Jack に『大地』を返し、『復活』を示した。彼はぼくのこんな英断をしばしば見ているから、先日は難しいといったその本を夏休みの宿題の共同研究の対象にすることについて、何もいわなかった。
 彼のノートに分数方程式を解いてみて、ぼくが昨日間違いをしていたのを発見する。どうしても出来ないのが一つある。(翌日の注記:印刷の間違いと分った。)
 方程式の応用である次のような問題に勘で答えを出す競争をした。
  適当な数字を—の所に入れて、縦横の計が 34 になるようにせよ。
  —979
  79—9
  9—99
  999—
タイムは測らなかったが、五秒ほどで出来た
*。ぼくが一秒ほど速かった。教科書 82 ページの 10 番も勘でやってみる。ぼくが、答えだけならば得られた。こんなことでは原始的だと、教科書を閉じてしまった。

 かなりの日々に無駄な時間を持った。何のことだと聞かれると、自分に聞かせることも出来ない。それほどでもないかも知れないが、どうも不満足な出来栄えだったと思わずにいられない。
Sam による欄外注記
 * 確かに五秒ほどだ。最初にどういうことに注意するかが分れば、あとは「いもづる式」だね。
引用時の注
  1. 日本のプロ野球が 2 リーグ制になって 2 年目のこの年、セントラル・リーグとパシフィック・リーグの各選抜チームによる対抗試合、オールスターゲームの第一回が開催された。
  2. この頃、阪急ブレーブスの三塁手だった中谷順次選手。後に中谷演男、中谷準志の登録名でもプレーした。私は阪急ファンだったので、彼の活躍が嬉しかった。Jack は当時、東急フライヤーズ(現・北海道日本ハムファイターズ)のファンで、この日、同じくパ・リーグの勝利を喜んだのである。

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