2013年4月19日金曜日

いくら何でもひどい言い方だ


高校(1 年生)時代の交換日記から

Ted: 1951 年 8 月 23 日(木)晴れ一時雨

 家にいても何も出来そうになかったから、約束通り Jack と解析の復習をし、試合をするつもりで、彼のところへ行った。Lotus から電話があって、もうすぐ Jack の家へ来るということだった。われわれが何も始めないうちに、Lotus は来た。彼は、風呂敷包みを持っていて、すぐにそれを開いて質問し始めた。風呂敷包みの中味は、Right Glorious のインク箱、解析の虎の巻、生物のノート、そして生物辞典だった。連立方程式を分裂方程式とおどけていってみたり、「Jack の頭は伸びるからいいな。ぼくの頭はもう停滞しているぜ。進化論じゃない。退化論だ*」といったり、手を口の近くへ上げたりまた下げたりして話すのに忙しい。

 Lotus が、Jack の手紙コレクションを引き掴んで有無をいわさずに見始めたときには、Jack が被告のように神妙な様子になったのでかわいそうだった。しかし、大事にはならなかった。第一音を低く、長音の第二音はぐっと高く、同じく長音の第三音をたぐるようにあとに続けて、第四音にいたって最初の高さに戻るように発声した姓名の下へ疑問の終助詞をつけてから、Lotus は「あきちゃったよ」といった。いくら何でもひどい言い方だ。ゲームか何かのように考えている。(注 1)(つづく)
Ted 自身による欄外注記
 * マクス・ノルダウの退化論というのがあるのだね。漱石の「倫敦塔」の劈頭に書いてあった。

引用時の注
  1. Lotus がいった姓名は、当時私が気にし始めていた Minnie のものだった。私の定年退職から間もない頃に開催された中学の同期会で、私は Minnie と久しぶりに再会した。その二次会のとき、彼女は私に、「(中学生時代に)わたしにラブレターをくれた人たちは皆早く死んだのね」と、Lotus と Funny について、あっけらかんといった。彼らのどちらかが学校の彼女の靴箱にラブレターを入れていたことも、彼女は話してくれた。それは、シャイな Funny のほうだっただろうか。

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