2013年4月20日土曜日

嫌いなものでも一度は


高校(1 年生)時代の交換日記から

Sam: 1951 年 8 月 25 日(土)晴れ

 午後、夏休みの宿題である生物の「夏草の標本」を持って、図書館へ行く。普通植物検索表というのを借りて調べ始めたが、前部の標本の科名を知ることはきわめて困難である。まだ全部調べ上がっていなかったが、眠くなって何もしたくなくなったところで、自転車を飛ばして帰った。

 Ted と約束しながら行かなかったのは、本当に済まないことをしたと思った。と、そこへ Ted がわざわざ来てくれた。嬉しかったが、気の毒だった。そして、気の毒な話ばかりして、気の毒な理由で別れなければならなかった。しかし、それで不満を感じるような Ted ではないだろう。
 「違った趣味の分野」だから、仕方がない。Funny としばらく納涼踊りを見たあとで、彼の「首がだゆくなった」という言葉をきっかけにそこを離れ、彼の家で将棋をした。慎重に慎重を重ね、全精神を集中し、六局ばかり対局した。十一時半までそれをしていて、再び納涼踊りを見に行く。
 Gold が踊っている! たまらなくなって、Funny を放り出し、Gold のあとに続いて踊った。「オコサノオコサデホントダネ」というのである。初めのうちは、勝手が違っていたし、十日ばかりやらなかったので調子が出なかったが、だんだん雰囲気になれて来ると、愉快でたまらなくなっていった。Gold のほかにも紫中三年のクラスメートだった者が何人かいた。みんな楽しそうだった。
 続いて「炭坑節」。これを踊るのは初めてだったが、Gold の真似(エテ公と同種かいなんていい給うな。こうして覚えるのが最良なのだ)をしているうちに、すぐ分った。ちょうど十二時に終わった。それから Funny のところへ行くと、「まさか?」と思ったといって、舌をまいていた。
 Ted は、踊りはどうだい。ぜんぜん嫌いかね。ぼくはどんなに嫌いなものでも、よくないといわれるものでも、一度はどんなものか見たい、体験したいと思うね。生っかじりかもしれないが、何も分らないよりは、少しだけだが知っている方がよいだろう。多くの場合、きっとそうだ。昨晩は、Neg のところで「麻雀」というものの手ほどきも受けたよ。

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