2013年4月8日月曜日

暑い中のムダ足


高校(1 年生)時代の交換日記から

Ted: 1951 年 8 月 15 日(水)晴れ(つづき)

 昼も「大仕事」をしていたとき、Jack の声。大和デパートへ、と。途中、彼の家へ寄る。前で Lotus が待っていた。二枚のスメル館入場券があると(注 1)。三人で大和へ。入場料は三十円。No money.
 Lotus は二十二日頃から東京へ。敦賀高校 6–4 高知商業。宝船路町も勝つ。これらを歩きながら知る。Jack も Lotus も、ぼくが旅行中にはそれをつけているだけでも暑さが増すと思った腕時計をしている。無言。暑くて何も分らない。帰路、公園の中を通る。干上がった流れ。何かの幹にセミ。投石。はずれる。公園出口。両手の親指を接近させてから、さっと前後へ開いた Lotus。散る紙片。白、黄色。二枚のスメル館入場券の末路。たぶん複雑な表情で見ていたぼく。歩行停止。いつかのように、丁寧な「さようなら」。細くて白く、ひじだけが黒い Lotus の腕。右側を少し行ってから左側を。それぞれの思いで見送った Jack とぼく。「何も破らんかていいがにな」と Jack。そうかもしれない。
 あたかもプールの縁に坐っていて水しぶきをかけられたかのように、シャツをぬらしながら、Jack の部屋の真ん中におかれた飯台の上の、紙に線を引いて決め込んだ「プール」を見つめる。古橋も橋爪も浜口もマーシャルも駄目。種目毎に世界新。四百米自由形にいたっては、三着までが圧倒的な記録を樹立。四着でもタイ記録。計算方法を変える必要あり。(注 2)(つづく)
引用時の注
  1. スメル館とは、大和デパートの中にあった映画館だろう。Jack は映画を見るのではなく大和へ行こうと私を誘ったが、Lotus は Jack と映画を見るつもりだったらしい。私はそこで遠慮して帰ればよかったのだが、気が利かなかった。
  2. サイコロを使ってする競泳ゲームを考案して遊んだのだったか。

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