2013年4月28日日曜日

雨中を歩いて


高校(1 年生)時代の交換日記から

Sam: 1951 年 8 月 29 日(水)曇りのち雨(つづき)

 香林坊で電車を待ったが、ちょうど交差点のところまで電車が来たと思ったら、停電で動かなくなった。むしゃくしゃして、決然と雨中行軍を続行する。市役所の前までも行かない先に、電車は動き出して、ぼくを追い越して行ったので、なおむしゃくしゃする。遠いなあーと感じる。久しく歩かないからだろう。自転車ならいま頃着いているだろうなどと思いながら、はねの上がらないように気をつけて歩く。時間の経つのがとても気になる。いくら歩くのが好きだからといっても、これでは誰だって参ってしまう。Ted は本当に気の毒だ。相手の身になって見ないと分らないものだね。どうしても、五回連続という要求は実行しなければならない(注 1)
 歩きながら、いろいろなことを思ったり考えたりした。しかし、取り立てて記すようなものはない。秋の花が美しく咲き乱れている紫中の前を通ったとき、「きれいだ!」と思わないではいられなかった。どこかやはり懐かしい。
 大学病院の少し手前で、Twelve と同姓の友人に出会い、二分ばかり話をした。内容はといえば、Ted とぼくがまだ二円切手を使って通信していた時分に主として話題になったようなことが大半——。
 帰りは犀川の水量がどれくらい増したか見たくなったので、Chawan 君の家のある通りを通って(もちろん、そのときはそうとは知らなかったんだ)、坂を下りた。近道をしようとばかり思って歩いているうちに、川へ出る道を失してしまった。
引用時の注
  1. 日記の交換に私が足を運ぶことが続いたので、以後の 5 回は Sam が続けて交換に来るようにと、私が要求したのだろう。

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