2013年3月20日水曜日

映画を見に行くのは


高校(1 年生)時代の交換日記から

Sam: 1951 年 7 月 30 日(月)雨

 朝から雨が降っている。きょうの雨はどうしても気にくわない。そんなに大した雨ではないのだが。
 午前中は大和劇場へ行った。特別興行なので、持って行った券に 20 円をプラスしなければならなかった。映画を見ながら、ときどき笑った。初めのうちに多く笑った。後半は、ぼくももう二年ばかりしたら出会うかもしれない状態が主として描かれていた。『青年心理』の本では、「青年が劇を好むのは決して芸術的立場からくるのではなく、むしろ、劇が人間生活の姿を写し、それがかれらの情緒的想像を活躍せしめて、自分自身をその中に移し、その場面に共演し、そして自分自身の心的生活を拡張することができるからだ」と述べているが、それは適切である。われわれの限られた現実生活から、より広い複雑な人間世界を覗くことによって、いろいろな性格に触れようとするのである。映画や小説の主人公の姿を借りて、自分を優れた、強い、能力のあるものに仮想して、不満を解消させるために映画を見に行くのではない。

0 件のコメント:

コメントを投稿