2013年6月20日木曜日

「もう教える資格ない」


高校(1 年生)時代の交換日記から

Ted: 1951 年 10 月 12 日(金)晴れ

 破滅、敗退、転落! 何の欠如だろう。しかし、——。しかし、——。落ち着きのなさ。大スランプ。Jack は躍進した。
 平然としている勝利の女神 Vicky。とはいっても、ぼくはもっと平然と出来る。あの質問は、あの叫びは、あの問答は、決してぼく以上の自信ではない。だが、いまのぼくには、それをいう資格がない。将棋の駒を積み重ねた上のようなところに立っていたのだ。そこへ大震動が来た。三つの不覚が失った大量の点。そのあとへ代って入って来たものは、この錯綜した心理。
 生物の時間には、血が引いて行くような気持になり、三限にはペタペタと色を落としながら、何ごとかを病的に口走り、 Jap(注 1)の顔を見るのも嫌だった。結局はぼくが説明しなければならなかった |x| < |a| と |x| > |a| に納得の行かなかった Jap と、彼の逆数(ではない、逆文字?(注 2))は、ことごとにぼくを沈痛にする。これもいつかの「事件」のように「身から出たサビ」だが…。四限のあとで Hotten に会ったときは、「もう教える資格ない」といわなければならなかった。
引用時の注
  1. 実際の日記では、ここに「(TJ 君をこう呼ぶらしい。こんなことの始まる前に Vicky が "Japan これ教えて" といったように思うのが聞き違いだとしても、Hotten もいつかこのニックネームをいっていたから、確かだろう)」というカッコ書きがあり、TJ 君に対して、ここで初めて Jap というニックネームを使っている。
  2. Jap の姓の漢字二字を上下入れ替えると Vicky の姓になる。

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